The end in May(夕刻)
「……まあ、この辺で勘弁してやろか」
「ってもう誰も居ねえけど」
「最後は自分との戦いやったもんなあ」
子供達も皆帰ってしまった夕刻、ようやく出来上がった砂の城は赤色に映えていた。
「……すぐ跡形も無くなんのに、何やってんだか」
「無くなるから作ったんやろ」
「――ま、ね」
ふと彼から顔を背け、新一は立ち上がる。
傾く陽は膨張して広がり、水平線までも途切れて見えない。
それでも目で追っていると隣で立ち上がった気配がした。
「……あー」
「何だよ」
「やっぱ海に沈む夕陽見たら叫ばなアカンやろ」
「……まだ言ってんの」
「叫ぶか」
「やれば」
「ほな、『工藤、好きやー!』って叫んでもエエ?」
「――は」
直ぐには意味を量りかねた隙に、平次は一杯に息を吸い込んだ。
「ちょ――」
「工藤。好きや」
声は耳元で聞こえた。
囁きは低く細く、けれど波音も消す明瞭な響きで。
刹那に身体を駆け巡った。
「――」
「帰るか」
にま、と平次は笑んで砂まみれの服を払った。
「あちゃー、流石にこれは拙いんと違うか……お、工藤サンキュ――!?」
脇に避けていた彼の上着を拾い上げ、再び落とす。
ついでに足で砂を蹴った。
「何しとんねん!」
「顔に掛けないだけマシだろ」
「……ホンマガキやなあ」
「それはこっちの台詞。じゃ、先行くから」
「あーあー。学ラン砂だらけやん……」
ぶつぶつと文句を言う彼を余所に、靴を手にして踵を返す。
陽が落ち切る前に身体の熱を冷まさなければ。
夕陽と色が同化している今なら、まだ間に合う。
彼のバイクに向かって歩き出す、その先には薄闇。
end.
……夕刻の方はおまけですー。最早五月じゃなくても良いような。
ははは。……居たたまれない恥ずかしさですがしょうじょまんがスキーってことでひとつ……
しかもこんな展開では残間さんには差し上げられないではありませんか(苦笑)
ほ、本編だけでももらってもらえ……ないか。きゅー。
ちなみにテーマは「飛び出せ青春!」(嘘)