ドロップ


----like a green things.

 


 明かりの下で摘んだドロップを透かして見る。
 一瞬、何かの貴石に見えたそれは口に入れればやはり砂糖の塊で。
 何個目か忘れたそれを、舌で転がす。
「お、缶入りドロップやなんて珍しなあ。1個もろてええ?」
「ん」
 雑誌から目を離さず答えると、テーブルの上でガラガラと塊が金属に当たる音がした。
「いるよな、全部の色見ないと気が済まない奴」
「ほっとけ。……っと、イチゴ、オレンジ、黄色ってレモンやよな?」
「知らない」
「……緑色って、無かったか?」
 更に金属音が響く。余程全色揃えたいらしい。
 読書の邪魔だし、放っておくとドロップ全部ばらまきかねない。
「あったよ。喰った」
「は?全部?」
「ん。これ最後の1コ」
 砂糖の塊を舌に乗せ証拠とばかりに差し出すと、奴は怪訝な顔をした。
「な?」
「ちゅうか、それだけ選ったんか?」
「俺、メロン味好きだから」
「はん。始めて聞いたわ」
「嘘。別に好きじゃないけど、意地でさ」
 いい加減口の中も荒れてきて、舌も少し切れた気配。
 それでもいつかは、近いものになるかもと全部舐めてみたけれど。
「何で」
「んー、でもやっぱ違うかも」
「何がや」
「もっと水分多そうだし。似てるかもって思ったんだけどな」
「だから、何が」
「気にすんな、独り言だから」
「………」
「これ以外なら全部あるだろうから、好きなの喰えば」

 

 不可解そうに凝視する奴の目は、ゼリーの方が近いかもしれない。
 そう思いながら、緑のドロップを噛み砕いた。

 

 

 

 


end.

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