ring a bell


 

 

「おー、除夜の鐘や。聞こえるか?」
「ああ……微かにな」
「今年も色々あったなあ。事件事件で、気の休まる暇もないわ」
「そりゃ確かにそうだったけど。なあ……服部」
「なに?」
「時差忘れてない?お前」
「……そないなモンもあったなあ」
「………」
「やって、お前が日本に居ないんが悪いんやで。折角二人で元朝参り〜、って思っとったのに、声しか聞けへん」
「……仕方無いだろ。元々はクリスマスに来いって言われてたんだから」
「まあなあ。工藤、クリスマスは俺ん事選んでくれたんやから、正月は家族水入らずで過ごし」
「――――」
「工藤?」
「そ……れがさ、家族で過ごすっていうからこっち来てみれば人沢山呼んで年越しパーティだと。ったくうちの親はそういうの好きだから」
「確かにざわざわ言ってるなあ。いいんか、電話してても」
「ああ、12時位に戻ってれば大丈夫。最初から最後まで付き合う気ないし」
「俺も12時になったら家族で新年のご挨拶や。お、あともうちょいやな」
「こっちはまだまだ。宴はたけなわだけどな」
「――――」
「服部?」
「……何だか不思議やな」
「何が」
「同じ時の中に居るのに、こっちとそっちじゃ刻んでる時の流れは違うんやで」
「しみじみ言ってるけどな服部、それは太陽と地球に言うべき問題だろ」
「……相変わらずやな工藤。大晦日やのに」
「今日も明日も一続きだし?結局は」
「せやけどなあ。やっぱこう、新しい年を迎えるになあ……あ」
「?」
「12時や。……明けましておめっとさん」
「―――おめでと。……って家族でご挨拶なんじゃなかったのかよ」
「お前に一番はじめに言いたかったさかいな」
「……そう」
「何や、工藤。嬉しないか?俺は嬉しいんやけど」
「―――こっちはまだ年明けてないし」
「せやなあ。ま、お前帰って来てから改めて挨拶するとして、ちょお電話待ってもらっててええ?」
「ああ……何で」
「今から超特急で家族に新年のご挨拶やから。直ぐ戻るし」
「……だったら切った方が」
「阿呆言うなや。一度切ったら繋がらへんぞきっと。それにまだ」
「……?」
「まだそっちは新年やないし。お前の時間でも挨拶したいやん」
「―――ま……あ」
「したらちょお待っといてな!」
「おい!だからって」
「…………」
「…………」
「…………」
「……馬っ鹿だな……ホントに。電話代幾ら掛かると思って」
「…………」
「『新ちゃーん、そろそろ……あら?顔赤いけどどう』……何でもねーって!時間になったら行くからさ」
「…………」
「ったく……」
「…………」
「…………」
「―――おい、工藤?」
「…………」
「もしもーし……まさか切ったんと」
「切ってねえよ」
「はー良かったわー。お前の事やから心配したんや」
「折角だから、祈ってた」
「……は?」
「”新しい年が、良いものでありますように”」

 

 刻む時は違っていても電話に流れる時は同じもので、
 そして二人は流れる時を確かに共有していた。

 

 

 

 

 


end.

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