四月馬鹿


 

 

『今日は―――ですねえ。各地で起こった……を―――』  
 ボリュームを絞ったラジオからニュースが流れてきた。
 見るともなくめくっていた雑誌を、ソファーの脇に避ける。
「なあ、工藤」
「―――ん」
 背もたれがわりにされている肩の近くから返事がした。返事はあったが、目は本から離れない。
「今日って、4月1日やんなあ」
「そうだけど?」
「堂々とウソつける日やなあ」
「まあね」
「なあなあなあ」
 三度も呼んで、やっと目を上げた。
「何」
「俺の事、どう思ってんか聞かせて」
「……はあ?」
「やからー。俺ん事、好きや思てる?」
「………」
「ウソでええから、教えてや」
 黙り込む彼に畳みかける問い。今日だからこそ聞けること。
 言葉そのままに聞くか、言葉の裏の意味を聞くか。
 どちらの答えでも、構わない。
「―――」
 ぱたり、と本を閉じる音がした。
 途端目の前が暗くなる。
「な―――」
 直ぐに明るくなった。本で視界を遮られたらしい。
 怒っているのか照れているのか、少し朱の入った彼の顔が間近にあった。
「―――言った、からな」

「……はあ?何やソレ、ズルやわ」
「うるさい四月馬鹿。もう言わねえ」
 尖った声で台詞を投げつけると、再び本を開いた。
「四月馬鹿て……なー。二文字か三文字か、どっちかだけでも教えてや」
「嫌」
「……せやなかったら来年の今日、また同じ質問するで?」
「すれば。言わねえけど」
「なあ工藤ー」
「………」
 元の体勢に戻った彼は引っ張っても揺さぶっても、断固として反応を返そうとしない。
 今度はこっちから寄りかかる。重いだろうが、それでも無反応だ。
「……まあ、ええわ」
 本で遮られた時に触れた
指先の熱は、きっと本当だろうから。

 

 

 

 


end.

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