present? (*HAPPY BIRTHDAY*...3) 

 

 

 全てが終わって家に着いたのは夜更けだった。
 帰路、軽く食事を済ませていたものの途中でアルコールや食べ物を買い込んだ。
 パーティ、と言うには程遠いけれど、それはそれで記念すべき日だと思う。
「―――何これ」
 鍵を開け、入った玄関口の灯りの下に積まれた包み。
 郵便、宅配便、航空便、と諸々取りそろえ、それにおそらく手持ちで届けられたもの。
「今日な、午前中にもしかしたらお前帰ってるかとここ来たんや。そしたら、次々届け物や」
「そりゃ―――」
 言葉が続かない。悪いな、と口の中で呟いた。
「全部引き取って置いといたで。お前の姉ちゃんも会えなくて残念がってたなあ」
「蘭も来たんだ。……皆に、礼言わなきゃな」
 ひとつづつ、包みを抱えていく。
「何か持とか?」
「ああ……でも、いい」
「―――愛されてんなあ、工藤」
「まあね」
「妬いてええ?」
「何でだよ」
 リビングで包みの送り主を確かめていると、平次が買い込んだ袋からアルコールを出し始めた。
「コンビニの酒やけど、無いよかマシか……っておい工藤」
 呼ばれて、ケータイに伸ばした手を止めた。
「何」
「何処に掛けるんや」
「え。だから、プレゼントくれた皆にお礼―――」
 全部を言う前に、手にしたケータイを取り上げられた。
「駄ー目ーや」
「……何でだよ」
「お前が電話掛けまくっとる間に明日やぞ。そんなんアカンわ」
「まあ、確かにそんな時間だけど―――」
 見上げた時計は、今日の残り少ない時間を指している。
 戻る途中で生まれた時間はとっくに過ぎてしまい、軽い食事を摂った時に、おめでとうの乾杯をした位だ。
「明日でええやん。それより俺、お前にちゃんと言いたくて」
「―――な、に」
 ゆっくりと肩を押され、長椅子の背に斜めに沈んだ。
 手が頬に当てられ、唇が唇に当てられる。
 日に焼けてかさついたそれは、けれど痛くはなかった。
「―――」
 名残惜しそうに少しだけ離すとそのまま抱きしめられた。
「こうやってな、キスして、抱きしめて、―――『誕生日おめでと』ってな」
「……ありがと」
 素直に答えて、彼の背中に手を回した。

 

「……そうや」
 幾度目かのキスの後で、何を思い出したのか彼が言った。
「俺もな、プレゼント持ってきたんや」
「ああ……何?」
「それなんやけど、―――」
 長椅子の側にあった彼の荷物の口を開け、探していた仕草が不意に止まった。
「……置いてきたわ」
「―――は?」
「工藤、すまん!ちゃんと買っといたんやけど、家に置いてきてしもてん……」
「別に。いいよ」
「今度、持って来るか届けるさかい、―――」
「……だから、」
 ―――今日ここに居てくれるだけで、今は他に何もいらない。
 と口には出さないままに彼にキスをひとつした。

 

 

end.

 

   「5月5日、朝。」   

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